大判例

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東京高等裁判所 昭和61年(行ケ)105号 判決

一 請求の原因一(特許庁における手続の経緯)、二(本願発明の要旨)及び三(審決の理由の要点)の事実は、当事者間に争いがない。

二 そこで、原告主張の審決の取消事由の存否について判断する。

本件の争点は、引用例二記載のものが、「上壁に接触してそれに熱を供給する、絶縁材料と上壁との間の高度に吸熱性の二部材で放射方向に連続したペレツトを備えた」構成を有するか否かという点に存するから、以下この点について検討する。

1 審決が、その理由中において、引用例二記載のものが備えているとする高度に吸熱性の二部材とは、引用例二の考案の詳細な説明に記載されている鉄片5とアルミ鈑などの蓄熱材6を指すものであることは、当事者間に争いがない。

成立に争いのない甲第五号証によれば、引用例二の考案の詳細な説明には、実施例の説明として、「外装鈑3の内面に石綿などの断熱材4を設けると共に底部1中心に鉄片5を設け、この鉄片5と同心円状にアルミ鈑などの蓄熱材6を前記断熱材4上に設け、」(第一欄第二〇行ないし第二三行)と記載されていること、引用例二記載の図面には、円形の鉄片5と同心円状に蓄熱材6が嵌合して配置されているものが示されていることが認められる。

なお、円環状のアルミ鈑と鉄片を保温容器の通常の使用範囲で加熱すると、アルミ鈑は外周面及び円孔が外方側、すなわち半径方向に膨張し、アルミニウムの熱膨張率は鉄のそれより大きいから、アルミ鈑と鉄片との嵌合をゆるめる方向に働くことは当事者間に争いがなく、右事実によれば、引用例二記載の保温容器を加熱して使用した場合、鉄片5と蓄熱材6との間に断絶が生ずることは明らかである。

2 ところで、前記のとおり、引用例二の考案の詳細な説明には、「外装鈑3の内面に石綿などの断熱材4を設けると共に底部1中心に鉄片5を設け、この鉄片5と同心円状にアルミ鈑などの蓄熱材6を前記断熱材上に設け、」と記載されており、右記載によれば、引用例二記載のものにおいて、鉄片5も断熱材4上に設けられているものと認められなくはない。

しかし、前掲甲第五号証によれば、引用例二記載の考案の実用新案登録請求の範囲は、「金属製外装鈑3と該外装鈑3に嵌合される金属製内装鈑7とにて形成される間隙8に断熱材4を充填し、この断熱材4の底面上に金属製蓄熱材6を設け、前記外装鈑3と内装鈑7との周縁を一体的に結合したことを特徴とする料理用保温容器。」というものであること、引用例二の考案の詳細な説明には、「蓄熱材6(「5」とあるが誤記と認める。)は断熱材4上に設けられているため断熱材4によつて外装鈑3の温度は断熱すると共に、前記加熱または冷却されている蓄熱材6をよく保温するから、従つてこの断熱材4の断熱作用と蓄熱材6の蓄熱作用により(中略)最適の温度を確実に保持することができ、」(第二欄第八行ないし第一六行)、「蓄熱材6は内装鈑7と断熱材4間に挿入されているから、予め内側を強制的に加熱(略)または冷却(略)することにより蓄熱材6に充分保熱、保冷をさせることができ、」(第二欄第一八行ないし第二一行)と記載されていること、引用例二記載の第2図(別紙図面(三)第2図)には、蓄熱材6は断熱材4の上に設けられているが、鉄片5の下には断熱材4が配置されていないものが示されていることがそれぞれ認められ、右認定事実を総合すると、引用例二記載のものにおいて、断熱材4上に設けられているのは蓄熱材6のみであつて、鉄片5は断熱材4上に設けられていないものと認めるのが相当である。

右認定のとおり、鉄片5は断熱材4上に設けられておらず、したがつて、加熱又は冷却されても断熱されることはなく、蓄熱作用を有しないものというべきであるから、鉄片5は保温ペレツトの一部を構成しているものということはできず、引用例二記載のものにおいて、本願発明におけるペレツトに相当するものは鉄片5とアルミ鈑などの蓄熱材6の二部材で構成されている旨の被告の主張は理由がなく、被告の右主張と同旨の審決の認定も誤つているものというべきである。

以上のとおりであつて、引用例二記載のものは、「高度に吸熱性の二部材で放射方向に連続したペレツトを備えた」構成を有しないものといわざるを得ない。

したがつて、引用例二記載のものが右構成を有することを前提として、本願発明と引用例一記載のものとの相違点について、蓄熱作用をする部材を一体のものとして放射方向に連続したペレツトとする程度のことは当業者が容易になし得ることとした審決の認定、判断は誤りであり、右誤りが審決の結論に影響を及ぼすことは明らかであるから、審決は違法として取消しを免れない。

三 よつて、審決の違法を理由にその取消しを求める原告の本訴請求は正当としてこれを認容することとする。

〔編註その一〕 本願発明の要旨は左のとおりである。

外周縁と、そのすぐ内側の外方かつ上方に傾斜した側部と、だいたい平らな中央のへこんだ部分とを持つ成形された上壁と;前記上壁に前記周縁部で接合されてシールされ、前記上壁から前記側部と中央部において間隔をあけられた下壁と;前記上壁と下壁との間の熱絶縁材料の層と;前記上壁に接触してそれに熱を供給する、前記絶縁材料と上壁との間の高度に吸熱性の固体で放射方向に連続したペレツトと;前記上壁の中央部の近くで前記上壁の傾斜した側部の下面に接触するようになつていて前記ペレツトを前記中央部に心合わせする、前記ペレツトのまわりの薄い、高くなつた周縁フランジとを備えた、食物をあたためる配ぜん盆。

(別紙図面(一)参照)

〔編註その二〕 本件に関する図面は左のとおりである。

別紙図面(一)

<省略>

別紙図面(二)(省略)

別紙図面(三)

<省略>

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